フランチャイズに加盟した後、「こんなはずじゃなかった」と感じるオーナーは少なくありません。しかし、そのほとんどは加盟前の段階で防げたものです。
この記事では、FC本部でSV(スーパーバイザー)として多数の加盟店を担当してきた経験をもとに、加盟後に後悔する人に共通する3つの原因と、ギャップを防ぐための具体的な対策を解説します。
なお、加盟「前」に知っておくべき失敗パターンについては、「フランチャイズで失敗する人の共通点7選」で網羅的に解説しています。今回の記事は加盟「後」に感じるギャップに焦点を当てた内容です。あわせてお読みいただくことで、加盟前から加盟後までのリスクを一通り把握できます。
この記事で得られること: 加盟後に後悔する3つの原因を知り、事前に打てる具体的な対策がわかります。
“こんなはずじゃなかった”が起きる3つの原因
SVとして加盟店を担当する中で、「こんなはずじゃなかった」という言葉を何度も聞いてきました。その原因を分類すると、大きく3つに集約されます。
原因①:自分のスキルを過信していた
「自分ならもっとうまくやれる」——この自信が、加盟後のギャップを生む最も多いパターンのひとつです。
たとえば、実際に担当した加盟店で多かったのが、パソコンスキルの不足による業務の停滞です。売上管理、仕入れ発注、スタッフのシフト作成、本部への報告書作成など、日常業務にはパソコン操作が欠かせません。ところが、開業前に「なんとかなるだろう」と考えていたオーナーが、毎日の事務処理に想定の2〜3倍の時間を取られるケースは珍しくありませんでした。
特に一人で事業を回す予定だった場合、この工数の増加は致命的です。本来お客様への対応や集客に使うべき時間が、事務作業に消えていくことになります。
同様に、「営業や接客は得意だ」と自負していたものの、実際にお客様と対面すると思うように成果が出ないというケースもあります。前職での経験と、自分の店舗で一から信頼を築くことは別のスキルです。
現場メモ :自信を持つこと自体は悪いことではありません。問題は、「実際にやってみたらどうなるか」を事前に検証していないことにあります。自分の強みと弱みを客観的に把握している人ほど、加盟後にスムーズに立ち上がる傾向があります。この点については「フランチャイズに向いている人・向いていない人」(5本目)でも詳しく解説しています。
原因②:資金計算が甘かった
開業後に「こんなにお金がかかるとは思わなかった」と漏らすオーナーも多くいます。その原因のほとんどは、本部が提示する収支モデルをそのまま信じてしまったことにあります。
本部の収支モデルは、あくまでモデルケースです。立地条件、商圏人口、競合状況、オーナー自身のスキルなど、変動要素は多数あります。それにもかかわらず、自分のエリアや状況に合わせた現実的なシミュレーションをしていないと、開業後に収支が計画通りにいかず、資金繰りに苦しむことになります。
見落としやすい固定費の例:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ロイヤリティ | 売上に対して毎月一定割合が発生。売上が低くても支払いは続く |
| 広告分担金 | 本部が実施する広告費の一部を負担するケースが多い |
| 人件費 | アルバイト・パートの時給は最低賃金の上昇に伴い年々増加傾向 |
| 家賃・リース料 | 売上が落ちても毎月定額で発生する |
| 消耗品・雑費 | 小さな支出でも積み重なると月数万円規模になる |
特に重要なのは、売上が計画の70%に留まった場合でも事業が継続できるかどうかをシミュレーションしておくことです。この「70%シミュレーション」については「フランチャイズの開業資金」(2本目)の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
原因③:「こんなもんだろう」という認識の甘さ
3つの原因のうち、最も根深く、最も多いのがこのパターンです。
説明会で本部から話を聞き、契約書にも目を通し、開業資金も準備した。にもかかわらず、加盟後に「こんなはずじゃなかった」と感じる人がいます。なぜか。
それは、すべての情報を「自分ごと」として受け止めきれていなかったからです。
「ロイヤリティは売上の○%です」と説明を受けても、「まあ、そんなもんだろう」で流してしまう。「繁忙期は休みが取りにくくなります」と言われても、「なんとかなるだろう」と楽観する。契約書に書かれた競業避止義務(=契約終了後に同業種で開業できない期間の制限)の意味を深く考えない。
こうした「こんなもんだろう」の積み重ねが、加盟後に「こんなはずじゃなかった」に変わるのです。
現場メモ :SVとして見てきた中で、加盟後にギャップを感じるオーナーの多くは、加盟前に「聞いていなかった」のではなく「聞いていたが、受け止めきれていなかった」というケースがほとんどでした。本部の説明が不十分な場合もゼロではありませんが、多くの場合、情報自体は提供されていました。問題は受け取り方にあったのです。
だからこそ、事前に自分で調べること、本部の説明を鵜呑みにしないこと、そして疑問があれば必ず質問して確認することが欠かせません。本部への質問の仕方については「フランチャイズ本部の選び方」(3本目)、契約書で確認すべきポイントについては「フランチャイズ契約書の見方」(7本目)の記事も参考にしてください。
ギャップを感じずにスムーズに立ち上がった人がやっていたこと
一方で、加盟後にほとんどギャップを感じず、順調に事業を立ち上げた加盟者もいます。そうした人たちに共通していたのは、事前準備の徹底です。具体的には、次の4つのステップを踏んでいました。
ステップ1:自分が始めるビジネスのリサーチ
エリアの競合調査、ターゲット層の確認、需要の有無を自分の目と足で検証しています。本部が提示するデータだけでなく、実際に候補エリアを歩き、競合店に足を運び、商圏の特徴を自分で把握していました。
ステップ2:ロードマップの策定
開業から3ヶ月・半年・1年の時点で、売上・集客・オペレーションがどこまで到達しているべきかの計画を立てています。目標が明確なので、途中で「こんなはずじゃなかった」と感じにくい構造になっていました。
ステップ3:開業前のスキル準備
パソコン操作、接客、管理業務など、必要なスキルを開業前に洗い出し、不足しているものは先に学んでいます。自分の弱みを把握して、開業後に困らないよう手を打っていました。
ステップ4:オープン前の実務準備
集客の仕込み(チラシ・SNS・地域へのあいさつ回りなど)、スタッフがいる場合は採用・研修、オペレーションの確認を開業日までに完了させています。開業初日から「回せる状態」を作っていました。
この4つのステップを踏んでいた加盟者は、開業後に「こんなはずじゃなかった」という言葉がほぼ出てきませんでした。逆に言えば、事前準備の不足が、加盟後のギャップの正体だとも言えます。
まとめ|加盟後に後悔しないためのチェックリスト
「こんなはずじゃなかった」は、加盟後に突然降りかかるものではありません。加盟前の段階で、原因を潰しておくことで防げます。
以下のチェックリストを使って、加盟前にひとつずつ確認してみてください。
加盟前チェックリスト:
- ☐ 自分のスキル(PC操作・接客・管理業務など)を客観的に棚卸ししたか
- ☐ 本部の収支モデルを鵜呑みにせず、自分のエリアで現実的なシミュレーションをしたか
- ☐ 売上が計画の70%に留まった場合でも事業を継続できるか検証したか
- ☐ 説明会や契約書の内容を「自分ごと」として理解しているか
- ☐ 開業するビジネスのエリアリサーチを自分の目で行ったか
- ☐ 開業から1年間のロードマップを策定しているか
- ☐ 開業前に不足しているスキルの学習・準備を始めているか
- ☐ オープン前の集客・スタッフ採用・オペレーションの準備計画があるか
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フランチャイズ加盟を検討中の方は、まずは複数の本部を比較することから始めてください。1社だけの説明を聞いて判断するのではなく、複数の本部の資料を取り寄せて、条件・サポート体制・収支モデルを見比べることで、自分に合ったビジネスが見えてきます。
参考資料
- 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)「フランチャイズ・ガイドライン」
- 中小企業庁「小規模企業白書」
- 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」
- 経済産業省「商業統計調査」
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